その他

 亡くなった人に相続人がいない場合の話です。この場合、亡くなった人の遺産は、裁判所が選任した相続財産管理人という立場の人が管理します。通常弁護士がなります。相続財産管理人は相続人を探す公告を出して、それでも名乗り出す人がいなければ(通常いません)、今度は相続債権者を探して、相続債権者がいれば、換価できる財産があれば換価して、債権者に弁済します。それでも余った場合、今度は特別縁故者を探します。この特別縁故者とは、相続人ではないけど亡くなった人と生前何らかの関わりがあって(「生計を同じくしていた」とか「療養監護に勤めた」が典型ですが、それ以外にも何らかの縁故があった人)、亡くなった人が遺産を挙げてもよいと考えるような立場の人です。よくあるのは、内縁の妻とか、介護してくれた人・施設などです。こうした人が特別縁故者として名乗り出た場合、生前の関係吟味して、相応の関係があったと認められると一定の財産が与えれることがあります。この事例では、従兄で子供のころから親しくしていたとか、死亡後、身元確認・引き取りなどに協力したとして、さらに、財産増殖に寄与したとか心理面での強い支えになったなどの事情が考慮されて、遺産の1割程度のが分与されています。特別縁故者に分与して残った財産は国庫帰属になります。
東京家裁令和2年6月26日審判(家庭と法の裁判№31 100頁)
 被相続人のいとこである申立人2人が、被相続人との間で特別の縁故者であったと主張し、被相続人の相続財産の分与を求めた事案において、申立人2名と被相続人との関係が、いずれも通常の親族としての交際の範囲を超え、相続財産を分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に密接なものであったとして、申立人2名が特別縁故者に該当すると認めつつ、縁故の内容・程度等の事情を勘案し、申立人2名に対し、複数の不動産、預金等からなる相続財産からそれぞれ預金残高の1割程度に相当する金銭の一部分与を認めた事例。
 本件は、法定相続人のないまま死亡した被相続人C(昭和31年生、平成30年死亡)の父方従兄である申立人2名(A(昭和20年生)及びB(昭和32年生)が、民法958条の3第1項所定の特別縁故者に該当すると主張して、被相続人の相続財産の分与を求めた事案である。本件では、申立人2名が同項所定の「被相続人と生計を同じくしていた者」及び「被相続人の療養監護に勤めた者」のいずれにも該当しないことは明らかであり、、「その他被相続人と特別の縁故がった者」に該当するかが問題とされた。本審判は、同項所定の「その他被相続人と特別の縁故があった者」について、「生計同一者及び療養監護者に該当する者に準ずる程度に被相続人との間で具体的かつ現実的な交渉があり、相続財産の全部または一部をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に被相続人と密接な関係があった者」と解するのが相当であるとしている。その上で、本審判は、被相続人の生前における申立人2名と被相続人との交流関係について、いずれも前記3名の祖父母を起点とした親族全体の従来からの密接な交流関係の下で、幼少期より従兄同士の親しい関係として育まれ、その後も、被相続人が申立人2名に対してそれぞれ抱いていた個人的な親密さや信頼感情をを介して、生涯にわたり、基本的に親密な交流として継続してきたものであると認め、また、被相続人の死亡後、申立人2名が遺体の身元確認・引き取り、葬儀・納骨等、遺品管理・ごみの搬出等の対応に尽力していることについて、被相続人の生前における申立人2名と被相続人との間の前述のような関係を前提とするものと認めている。そして、本審判は、申し立てんん2名と被相続人との間のそのような関係性について、いずれも通常の親族としての交際の範囲を超え、相続財産の全部または一部を申立人2名に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に密接なものであったと評価し、申立人2名をいずれも特別縁故者に該当するものと判断している。本審判は申立人2名に対する分与財産や分与の割合について、申立人2名と被相続人との間の縁故の内容・程度等の事情を勘案し、申立人2名において、被相続人の財産増殖への寄与や、心情面における強い支えとなるべき心理的援助等がみられるわけではないなどとして、申立人2名に対して、複数の不動産、預金(約4億6500万円)、建物賃料、株式配当金、動産類等からなる相続財産から、それぞれ預金残高の1割程度に相当する5000万円の分与を認めている。