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静岡家裁浜松支部令和2年1月14日審判(判例時報№2496  82頁)
 本件は日本人夫婦である申立人らの間の体外受精で生じた胚を、ウクライナ人女性(以下、「本件代理母」という。)に移植し、本件代理母がウクライナ国内で出産した子(以下、「本件子」という。)は、本件子の母を本件代理母として胎児認知し、本件申し立てに先立って、本件代理母との協議により本件子の親権者を申立人夫と定め、申立人らは、本件この出生直後にウクライナ国内で本件子を引き取り、本件子を日本国内で適切に監護養育し、他方、本件代理母は、ウクライナ家族法に従って、本件この出生届に申立人らが父母として記載されることに同意していると認定した上で、申立人らの養親としての適格性、申立人らと未成年者らとの適合性に問題はない一方で、本件代理母は本件子が申立人らに監護養育されることを予定して本件子を懐胎しており、本件代理母が本件子を監護養育することは著しく困難で、本件子らを申立人らの特別養子とすることが、その利益のために特に必要があるといえ、本件代理母の同意もあるとして、本件子を申立人らの養子とすることを認めた。
 日本では、代理母出産は認められていません。そのため、これが認められている国・地域に渡航して代理母出産を行うケースが少なからず存在します。その昔、タレントのMとプロレスラーのT夫妻のケースが話題になりました。Mさんは病気のため子宮を摘出したので、米国人女性と契約し、Mさんの卵子とTさんの精子を使って双子の子どもを授かりました。日本に連れて帰り出生届を出そうとしたところ、戸籍上自らの子どもとして認めてもらえませんでした。日本では分娩した人が母とされているからです。このため、MさんとTさんは、自らの子として認めてほしいとして訴訟を提起しました。一審は、Mさんを母とは認めないとしましたが、二審は、Mさんを母と認める旨の判決をしました。しかし、最高裁判所は、二審の判決を破棄して、Mさんを母とは認めませんでした。(最高裁平成19年3月23日決定)。前記の静岡家裁浜松支部の裁判例は、日本人父母とこの間の戸籍上の親子関係を作るために、特別養子縁組という方法を使ったものです。代理母出産を認めるかどうかは様々な検討要素があり、まだコンセンサスがとれていません。
本来血縁のない間に親子関係を創設する縁組を、血縁がある親子関係で使用せざる得ないところ違和感はありますが、今の制度の中で生まれた子の幸せを考えるとやむ得ないところでしょう。