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海外在住の日本人有権者が最高裁裁判官の国民審査に投票できないのは、公務員を選任・罷免する権利を保障した憲法15条に違反するとして、ブラジル在住の男性(43)や映画監督の想田和弘さん(51)ら5人が国に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は25日、現行の国民審査法を「違憲」と判断した。裁判官15人の全員一致の意見。
最高裁は、在外邦人が最高裁判所裁判官の国民審査ができるような規定がない国民審査法は憲法違反としました。現在は、海外に住んでいる日本国籍保有者が総選挙のときに実施される最高裁判所裁判官の国民審査の投票ができないのですが、そのことは公務員の選定罷免権を規定した憲法15条に反するとしたのです。在外邦人の国政選挙の選挙権は2005年に、それを認めていない公職選挙法は違憲と判断しています。この延長で考えれば、国民審査を区別する理由はなく違憲判決は当然といえます。憲法ができた当時ならともかく、今は通信・交通が発達しています。在外邦人が在外公館などに出向いて投票することは不可能ではありませんし、その投票結果も瞬時に伝達可能です。在外邦人の国民審査を認めない理由はありません。
違憲判決には、その法律自体が違憲とする法令違憲と法律自体が違憲かどうかはともかくこの事例に該当法律を適用したことが違憲という適用違憲の2つがあります。今回は前者の方になり、国会は国民投票法の速やかな改正を求められます。ちなみに、法令違憲はこれまで10例あるそうです。有名なのは昭和47年に出た尊属殺人重罰規定(刑法200条)の違憲判決です。当時刑法200条には、尊属殺人といって、自分の親、祖父といった尊属をを殺害した場合特に重く処罰する規定がありました。父親から性的虐待を受けた女性がその父親を殺害した事例で、女性は尊属殺人に問われました。そのとき、最高裁判所は尊属殺人罪(刑法200条)は違憲であるとして、普通殺人罪(刑法199条)の適用を認めました。ただ、この判決の結論は概ね納得のいくものですが、尊属殺人罪の規定はその後も20年くらい改正され刑法の中にとどまりました。自民党の一部の人たちが、尊属殺人罪を廃止することに反対していたからといわれています。