知床沖で観光船が沈没して死傷者が出ています。痛ましい話です。船舶の事故があった場合、海難審判が行われることは知られています。ところでこの海難審判は裁判ではありません。海難審判は行政手続きで船舶操縦士、海技士らの懲戒処分を行う手続きです。もし、刑事罰を科す場合や民事賠償を求める場合、これとは別にそれぞれ刑事訴訟、民事訴訟が提起されます。かつては海難審判庁という役所があって、海難事故が発生したらそこが原因究明をしていたので、話題になることが多かったのですが、今は事故の原因究明は運輸安全委員会が行っていて、海難審判は操縦士らの懲戒だけになり、注目されることがなくなりました。海難審判所は東京にあるほか、函館、仙台、横浜、神戸、広島、門司、長崎に地方海難審判所が、那覇に門司地方海難審判所の出張所があります。海難審判の結果に不服がある場合、東京高等裁判所に取消訴訟を提起できます。また、海難審判では、受審人(刑事事件の被告人に相当する)となった人は、補佐人(刑事事件の弁護人に相当する)をつけることができ、弁護士資格を有する者は補佐人登録をすることができます(海事補佐人という。)。残念ながら私は登録してませんが。


 今日、三越豊田店がオープンしたので見てきました。お花がいっぱい飾られて、華やかな雰囲気です。この建物で豊田そごうが12年、松坂屋豊田店が20年営業してきました。百貨店が閉店しているニュースがたびたび聞こえてきますが、地元活性化の起爆剤として、市民生活のよりどころとして、定着してくれたらいいと思います。


 特殊詐欺の被害者が、特殊詐欺の実行者(受け子)だけでなく、特殊詐欺グループの背後にいた広域暴力団の組長に対して損害賠償の請求を求めたものです。いわゆる暴力団対策法では、暴力団構成員の威力を利用した資金獲得行為によって被害を受けた人は、直接の行為者だけでなく、その暴力団が所属する広域暴力団の組長に対しての損害賠償請求を認めています。特殊詐欺の場合、暴力団との関係が不明であることが多いのですが、暴力団構成員の関与が明らかになれば、本件のように、暴対法に基づき、組長に損害賠償請求できることになります。直接の行為者はお金を持っていないのが普通ですので、組長に対して請求できるのは被害回復として望ましいです。ただし、「威力利用」といえないといけないのですが、本件の結論はそこはあまり厳密に判断していないようです。

東京地裁令和元年6月21日判決(判例タイムズ№1487  245頁)
 暴力団の構成員が関与した特殊詐欺について、当該構成員が所属する暴力団の代表者の暴力団対策法上の責任を肯定した事例
1 事実の概要
  原告らはそれぞれ、息子に成りすました者から電話を受け、緊急に金銭を必要としている事態にある旨を告げられその旨誤信して、金員を指示された通りに振り込みこれを詐取された(以下、このいわゆる特殊詐欺を「本件各詐欺」という。)。本件は、本件各詐欺をした特殊詐欺グループに属する者が指定暴力団Y会(以下、「Y会」という。)の惨事組織の構成員であり(以下、この構成員を「本件構成員」という。)、暴力団の威力を使用して資金獲得行為を行うについて本件各詐欺をしたとして、原告らが、Y会の代表者(会長)である被告に対し、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(以下、「暴力団対策法」という。)31条の2本文又は民法715条1項本文に基づき、原告らが詐取された金員相当額の損害賠償を求めた事案である。中心的争点は、本件各詐欺外力利用敷金獲得行為を行うについて他人の財産を侵害したものであったか(暴力団対策法31条の2本文)である(なお、本判決においては民法715条1項の使用者責任については判断されていない。)。この点について、原告は、暴力団員が、資金獲得を行う組織の内部統制の維持のために、組織の内部の者に対し、自らが指定暴力団に所属していることを認識させた状態の下で、その影響力を利用して、指示・命令に従わずに裏切り行為をしたときには組織的な暴行・脅迫が加えられる可能性があることを認識させることによって、当該犯行グループの指示・命令又は規律の実効性が高まる方法で威力を利用する場合も、暴力団対策法31条の2本文にいう「威力を利用して」」に当たるなど主張した。これに対し、被告は、簿力団対策法31条の2本文の威力利用敷金獲得行為に係る「威力を利用して」は、被害者に対して威力を行使することを意味するものと限定的に解釈すべきであるとして、本件構成員は本件各詐欺の被害者とは全く接触していないのであるから、暴力団対策法31条の2本文にいう「威力を利用して」に当たるということはできないと主張した。
2 本判決の判断
   本判決は、暴力団の構成員の多くが、典型的な威力利用資金獲得行為に対する種々の規制、取り締まりを回避して新たに資金獲得源を確保すべく、暴力団の威力の利用を背景として特殊詐欺を実行しているという実態があり、このような実態は社会一般に認識されていたこと、本件各詐欺は、特殊詐欺グループが管理する預金口座に金員を振り込ませるという組織的・計画的なものであって、暴力団高構成員が従事・加担し、暴力団の威力の利用を背景として資金を獲得する活動に係るものに痛有する類型であるということができることを指摘した上で、本件各詐欺は、いずれも、Y会指定暴力団員であった本件構成員(なお、本件構成員がY会指定の暴力団員に該当するかもどうか自体も争点になっており、本判決はこの点を肯定した。)がこれを実行した以上、Y化の構成員による威力利用資金獲得行為と関連する行為であるというほかなく、威力利用資金獲得行為を行うについて他人の財産を侵害したものといわなければならないとして、本件各詐欺が、Y会の「威力利用資金獲得行為を行うについて他人の財産を侵害したものといわなければならないとして、本件各詐欺が、Y会の「威力利用資金獲得行為を行うについて」(暴力団対策法31女の2本文)されたものであることを認めた。また、被告の主張に対する応答として、本件構成員と原告らが直接接触せず、Y会の威力が被害者である原告らに示されなかったからといって、本件各詐欺が威力利用資金獲得行為を行うにつちえされたものであること(威力利用資金獲得行為との関連性)が否定されることにはならないとした上、被告が免責を得るためには、暴力団対策法31条の2第1号または第2号所定の事由を主張・立証するしかないことも指摘した。


ウェブサイトの書き込みで名誉、プライバシーを侵害された場合、一定要件の下、サイト運営会社に対して、書き込みをした人を特定する情報の開示を求めることができるという法律があります。特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項の委任を受けた特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律という長い名称ですが、簡易には、プロバイダー等責任制限法といっておきます。googleやFacebookに対しては従来から認められていましたが、携帯電話のSMSについて、携帯電話会社に対しても認めたのがこの判例です。何が問題かというとSNSのアカウント情報はメールアドレスであることが多いですが、SMSの場合、本人情報は携帯電話番号そのものだということです。判決は、メールアドレスと携帯電話番号を区別しないといけない理由はないとして、発信者情報の開示を認めました。
東京地裁令和元年12月11日判決(判例タイムズ№1487  233頁)
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項の委任を受けた特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第四条第一項の発信者情報を定める省令(平成14年総務省令第57号)3号の「電子メールアドレス」にSMS(ショートメッセージサービス)用電子メールアドレスが含まれるとした事例。
1 本件は、インターネット所の投稿サイトに氏名不詳者がした投稿によって権利を侵害されたと主張する原告らが、当該投稿をした者に対する不法行為に基づく損害賠償請求検討を行使するため、当該投稿の発信者がその発信のために利用した経由プロバイダーである被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償制限及び発信者情報開示に関する法律(以下、「プロバイダー責任制限法」という。)4条1項に基づき、当該投稿の発信者らに係る情報の開示を求めた事案である。原告らは、①氏名又は名称、②住所、③電子メールアドレス(SMTP)に加え、④SMS用電子メールアドレスを、開示を求める発信者情報の対象とした。なお、SMS(ショートメッセージサービス)とは、携帯電話やPHS同士で文章をやり取りするサービスであり、SMSの送受信においては、電話番号が送受信先の電子メールアドレスとして機能するものである。
2 本件における主たる争点は、プロバイダー責任制限法4条1項によって開示の対象となる発信者情報に、SMS用電子メールアドレスが含まれるか否かである。この点に関する法律および総務省令の定めは複雑であるが、整理すると次の通りである。(1)プロバイダー責任制限法4条1項柱書は、開示請求の対象となる発信者情報について、「氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。」と定め、これを受けて、(2)平成14年総務省令3号は、「発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号をいう。)」を発信者の特定に資する情報の一つとして定めている。平成14年総務省令3号の「電子メールアドレス」にSMS用電子メールアドレスも含まれるか否かは、その文言上、一義的に明確ではない。一方、(3)プロバイダ責任制限法3条の2第2号は、「電子メールアドレス等」について、「公職選挙法142条の3第3項に規定する電子メールアドレス等をいう。」と定義しているところ、(4)公職選挙法142条の3代3項は、「電子メールアドレス等」の定義として、「電子メールアドレス」(到底電子メールの送信の適正化等の関する法律第2条第3号に規定する電子メールアドレスをいう。以下同じ。)その他のインターネット等を利用する方法によりそのものに連絡をする際に必要となる情報」をいうと定めている。そこで、(5)特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(以下、「特定電子メール法」という。)2条3号を見ると、「電子メールアドレス」を「電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の情報を使用する通信端末機器の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信であって、総務省令で定める通信方式を用いるものをいう。」と定義しており、これを受けて、【6】特定電子メールの送信の適正化等に関する法律第二条第一号の通信方式を定める省令(平成221年総務省令第85条)では、1号において、SMTPが用いられる通信方式が、2号において、「携帯して使用する通信端末機器に電話番号を送受信するためにおmちいて通信文その他の情報を伝達する通信方式」すなわちSMS用電子メールアドレスが用いられる通信方式が規定されている。このような条文構造から、特定電子メール法及び公職選挙法の定義を引用しているプロバイダ責任制限法3条ノ2第2号の「電子メールアドレス等」にSMS用電子メールアドレスが含まれることは文理上明確であるが、プロバイダ責任制限法4条1項の「発信者情報」にSMS用電子メールアドレスが含まれるか否かは、同項が引用する平成14年総務省令の解釈によることとなる。被告は、SMS用電子メールアドレスの開示は電話番号の開示と同義であり、これを認めることは、平成14年総務省令の制定及び改正の経緯や立案担当者の意思に反すること、プロバイダ責任制限法3条ノ2の趣旨と、同法4条1項及び平成14年総務省令が異なることなどを理由に、平成14年総務省令の定める「電子メールアドレス」にSMS用電子メールアドレスが含まれるとは解釈できないと主張した。
3 本判決は、反対説の立場に一定の理解を示しつつも、概要次の通り理由から、SMS用電子メールアドレスが平成14年総務省令3号の「電子メールアドレス」に該当すると解するのが相当であると判示した。すなわち、本判決は、①法解釈の予測可能性や法的安定性との観点に照らせば、同一の法律内における同一の用語の意義は、別段の定めがない限り、統一的に解釈するのが原則というべきである、②電話番号が発信者情報として開示の対象となるのは、あくまでもSMS用電子メールアドレスとして利用される限りにおいてであって、電話番号が一般的に開示の対象となると解釈されるわけではないことからすれば、SMS用電子メールアドレスの開示を認めることが、平成14年総務省令が発信者情報と限定列挙とした趣旨に反するとはいえないこと、③通常の電子メールアドレス(SMTP電子メールアドレス)破壊時の対象となるが、SMS用電子メールアドレスとして利用され得る電話番号について開示対象外であるとする実質的な根拠は乏しく、総務省の立案担当者の意思に照らしても実質的な根拠が乏しいとの結論を左右するものではない上、SMS用電子メールアドレスとして利用される得る電話番号に関してはSMTP電子メールアドレスよりもプライバシー及び通信に秘密の保護の要請が高いということもできないことなどを解釈理由として挙げている。なお、令和2年総務省令第82号により、平成14年総務省令第57号は改正され、発信者の電話番号を開示の対象とする権利の侵害に係る発信者情報として追加された。


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