今月20日に大阪地裁が、同性婚を法律で認めていないのは憲法違反であるとし、その立法不作為により損害を受けたとして国家賠償を求めた裁判で大阪地裁は同性婚を認めないのは憲法に違反しないという内容の判決を言い渡しました。現在の日本の法律上の婚姻制度は異性間のみです。ただ、近年価値観の多様化やLGBTといった少数派の権利がいわれるようになり、これまで当たり前と思ってきた婚姻制度にも変化の兆しが見られます。すでに法律上の婚姻ではありませんが、自治体レベルでは異性間でパートナーシップという婚姻類似の制度を認めているところもあります。もっとも、あくまで当該自治体限りで別の自治体に住所を移転すれば、制度は使えませんし、そもそも法律上の婚姻ではないので、相続も発生せず、配偶者控除などもありません。諸外国では、国の制度として、同性婚やパートナーシップを認めている国もかなりの数あります。ヨーロッパ、北米、南米の国が多いようですが、アジアでも台湾は認めているようです。日本でも、昨年札幌地裁が今回の大阪地裁とは違う内容の判決を出しました。たしかに、今は同性婚を認めないのが憲法違反かといわれると判決がいうように法の下の平等にも婚姻の自由にも反しないように思います。この問題は結局立法による対応が必要かもしれませんが、それでは同性婚容認派が多数派にならない限り法律の改正は望めません。とりわけ、この判決の婚姻が「男女が子を産み育てる関係を社会が保護する目的」とする価値観はあまりに保守的です。子の関係でいえば養子縁組などの制度も存在します。それに子を育てるだけが婚姻の目的とは思えません。さらに価値観の多様化が進んでくれば、数年後には立法不作為が違憲とされるのかもしれません。


静岡家裁浜松支部令和2年1月14日審判(判例時報№2496  82頁)
 本件は日本人夫婦である申立人らの間の体外受精で生じた胚を、ウクライナ人女性(以下、「本件代理母」という。)に移植し、本件代理母がウクライナ国内で出産した子(以下、「本件子」という。)は、本件子の母を本件代理母として胎児認知し、本件申し立てに先立って、本件代理母との協議により本件子の親権者を申立人夫と定め、申立人らは、本件この出生直後にウクライナ国内で本件子を引き取り、本件子を日本国内で適切に監護養育し、他方、本件代理母は、ウクライナ家族法に従って、本件この出生届に申立人らが父母として記載されることに同意していると認定した上で、申立人らの養親としての適格性、申立人らと未成年者らとの適合性に問題はない一方で、本件代理母は本件子が申立人らに監護養育されることを予定して本件子を懐胎しており、本件代理母が本件子を監護養育することは著しく困難で、本件子らを申立人らの特別養子とすることが、その利益のために特に必要があるといえ、本件代理母の同意もあるとして、本件子を申立人らの養子とすることを認めた。
 日本では、代理母出産は認められていません。そのため、これが認められている国・地域に渡航して代理母出産を行うケースが少なからず存在します。その昔、タレントのMとプロレスラーのT夫妻のケースが話題になりました。Mさんは病気のため子宮を摘出したので、米国人女性と契約し、Mさんの卵子とTさんの精子を使って双子の子どもを授かりました。日本に連れて帰り出生届を出そうとしたところ、戸籍上自らの子どもとして認めてもらえませんでした。日本では分娩した人が母とされているからです。このため、MさんとTさんは、自らの子として認めてほしいとして訴訟を提起しました。一審は、Mさんを母とは認めないとしましたが、二審は、Mさんを母と認める旨の判決をしました。しかし、最高裁判所は、二審の判決を破棄して、Mさんを母とは認めませんでした。(最高裁平成19年3月23日決定)。前記の静岡家裁浜松支部の裁判例は、日本人父母とこの間の戸籍上の親子関係を作るために、特別養子縁組という方法を使ったものです。代理母出産を認めるかどうかは様々な検討要素があり、まだコンセンサスがとれていません。
本来血縁のない間に親子関係を創設する縁組を、血縁がある親子関係で使用せざる得ないところ違和感はありますが、今の制度の中で生まれた子の幸せを考えるとやむ得ないところでしょう。


海外在住の日本人有権者が最高裁裁判官の国民審査に投票できないのは、公務員を選任・罷免する権利を保障した憲法15条に違反するとして、ブラジル在住の男性(43)や映画監督の想田和弘さん(51)ら5人が国に損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は25日、現行の国民審査法を「違憲」と判断した。裁判官15人の全員一致の意見。
最高裁は、在外邦人が最高裁判所裁判官の国民審査ができるような規定がない国民審査法は憲法違反としました。現在は、海外に住んでいる日本国籍保有者が総選挙のときに実施される最高裁判所裁判官の国民審査の投票ができないのですが、そのことは公務員の選定罷免権を規定した憲法15条に反するとしたのです。在外邦人の国政選挙の選挙権は2005年に、それを認めていない公職選挙法は違憲と判断しています。この延長で考えれば、国民審査を区別する理由はなく違憲判決は当然といえます。憲法ができた当時ならともかく、今は通信・交通が発達しています。在外邦人が在外公館などに出向いて投票することは不可能ではありませんし、その投票結果も瞬時に伝達可能です。在外邦人の国民審査を認めない理由はありません。
違憲判決には、その法律自体が違憲とする法令違憲と法律自体が違憲かどうかはともかくこの事例に該当法律を適用したことが違憲という適用違憲の2つがあります。今回は前者の方になり、国会は国民投票法の速やかな改正を求められます。ちなみに、法令違憲はこれまで10例あるそうです。有名なのは昭和47年に出た尊属殺人重罰規定(刑法200条)の違憲判決です。当時刑法200条には、尊属殺人といって、自分の親、祖父といった尊属をを殺害した場合特に重く処罰する規定がありました。父親から性的虐待を受けた女性がその父親を殺害した事例で、女性は尊属殺人に問われました。そのとき、最高裁判所は尊属殺人罪(刑法200条)は違憲であるとして、普通殺人罪(刑法199条)の適用を認めました。ただ、この判決の結論は概ね納得のいくものですが、尊属殺人罪の規定はその後も20年くらい改正され刑法の中にとどまりました。自民党の一部の人たちが、尊属殺人罪を廃止することに反対していたからといわれています。


 亡くなった人に相続人がいない場合の話です。この場合、亡くなった人の遺産は、裁判所が選任した相続財産管理人という立場の人が管理します。通常弁護士がなります。相続財産管理人は相続人を探す公告を出して、それでも名乗り出す人がいなければ(通常いません)、今度は相続債権者を探して、相続債権者がいれば、換価できる財産があれば換価して、債権者に弁済します。それでも余った場合、今度は特別縁故者を探します。この特別縁故者とは、相続人ではないけど亡くなった人と生前何らかの関わりがあって(「生計を同じくしていた」とか「療養監護に勤めた」が典型ですが、それ以外にも何らかの縁故があった人)、亡くなった人が遺産を挙げてもよいと考えるような立場の人です。よくあるのは、内縁の妻とか、介護してくれた人・施設などです。こうした人が特別縁故者として名乗り出た場合、生前の関係吟味して、相応の関係があったと認められると一定の財産が与えれることがあります。この事例では、従兄で子供のころから親しくしていたとか、死亡後、身元確認・引き取りなどに協力したとして、さらに、財産増殖に寄与したとか心理面での強い支えになったなどの事情が考慮されて、遺産の1割程度のが分与されています。特別縁故者に分与して残った財産は国庫帰属になります。
東京家裁令和2年6月26日審判(家庭と法の裁判№31 100頁)
 被相続人のいとこである申立人2人が、被相続人との間で特別の縁故者であったと主張し、被相続人の相続財産の分与を求めた事案において、申立人2名と被相続人との関係が、いずれも通常の親族としての交際の範囲を超え、相続財産を分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に密接なものであったとして、申立人2名が特別縁故者に該当すると認めつつ、縁故の内容・程度等の事情を勘案し、申立人2名に対し、複数の不動産、預金等からなる相続財産からそれぞれ預金残高の1割程度に相当する金銭の一部分与を認めた事例。
 本件は、法定相続人のないまま死亡した被相続人C(昭和31年生、平成30年死亡)の父方従兄である申立人2名(A(昭和20年生)及びB(昭和32年生)が、民法958条の3第1項所定の特別縁故者に該当すると主張して、被相続人の相続財産の分与を求めた事案である。本件では、申立人2名が同項所定の「被相続人と生計を同じくしていた者」及び「被相続人の療養監護に勤めた者」のいずれにも該当しないことは明らかであり、、「その他被相続人と特別の縁故がった者」に該当するかが問題とされた。本審判は、同項所定の「その他被相続人と特別の縁故があった者」について、「生計同一者及び療養監護者に該当する者に準ずる程度に被相続人との間で具体的かつ現実的な交渉があり、相続財産の全部または一部をその者に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に被相続人と密接な関係があった者」と解するのが相当であるとしている。その上で、本審判は、被相続人の生前における申立人2名と被相続人との交流関係について、いずれも前記3名の祖父母を起点とした親族全体の従来からの密接な交流関係の下で、幼少期より従兄同士の親しい関係として育まれ、その後も、被相続人が申立人2名に対してそれぞれ抱いていた個人的な親密さや信頼感情をを介して、生涯にわたり、基本的に親密な交流として継続してきたものであると認め、また、被相続人の死亡後、申立人2名が遺体の身元確認・引き取り、葬儀・納骨等、遺品管理・ごみの搬出等の対応に尽力していることについて、被相続人の生前における申立人2名と被相続人との間の前述のような関係を前提とするものと認めている。そして、本審判は、申し立てんん2名と被相続人との間のそのような関係性について、いずれも通常の親族としての交際の範囲を超え、相続財産の全部または一部を申立人2名に分与することが被相続人の意思に合致するであろうとみられる程度に密接なものであったと評価し、申立人2名をいずれも特別縁故者に該当するものと判断している。本審判は申立人2名に対する分与財産や分与の割合について、申立人2名と被相続人との間の縁故の内容・程度等の事情を勘案し、申立人2名において、被相続人の財産増殖への寄与や、心情面における強い支えとなるべき心理的援助等がみられるわけではないなどとして、申立人2名に対して、複数の不動産、預金(約4億6500万円)、建物賃料、株式配当金、動産類等からなる相続財産から、それぞれ預金残高の1割程度に相当する5000万円の分与を認めている。


毎日新聞の記事です。「父母の離婚後の子の養育を巡り、超党派の「共同養育支援議員連盟」(会長・柴山昌彦元文部科学相)は22日、離婚後の共同親権を認める制度の導入を求める提言書を古川禎久法相に提出した。」とあります。共同親権とは、離婚後も夫婦が共同で子の監護に当たるという制度です。中高年の人には『クレイマークレイマー』という映画を観たことある人もいるのではないでしょうか。この映画に出てくる夫婦は離婚後も、交代で子の監護をしています。現在日本の民法では、夫婦に子がいる場合、婚姻中は共同親権ですが、離婚に際しては、夫婦のいずれかを親権者と決めなければならないことになっています。つまり、離婚後は単独親権となり。一方の親だけが子の監護をします。そうすると、親権者のほうだけが、子の監護に責任を持つことになり、親権者でない親は養育費を負担することはあっても、子の監護をしないことになります。しかし、両親が離婚しても、子から見れば二人とも親であることに変わりありません。婚姻時と同じように愛情をかけて養育されるべきです。アメリカでは47の州で、イギリス、イタリア、ドイツ、韓国などの国では、制度はそれぞれ違いますが、離婚後も共同親権となっています。日本でも議論されてしかるべきです。ただ、問題もないわけではありません。例えば、DV離婚の場合とか児童虐待があるような場合、相手に離婚後居場所を知られたくない場合もありますが、離婚後に相手も子の親権者であれば、子の監護に関して相手に居場所を知られるきっかけとなりかねません。こうした問題点を克服できれば、子のためには望ましい制度といえそうです。


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